久しぶりに一つひとつ職人の矜持を噛み締めた。
こんな時期だからとカウンターを贅沢にゆっくりと使わせていただき。
蟹味噌入りのズワイ蟹に始まり。
とろけてゆく白イカと、長芋のアクセントが効いたもずく。
香ばしさと旨みで器を舐めたくなるほど最後まで美味しい鰻と聖護院大根のお椀。
鰆は焼き茄子をソース仕立てにして。
この時期一番の三枚。
いや、石鯛だけではなかった同率一位の三枚。
まるまる太った大羽鰯とホタルイカのフライ。自家製の和風タルタルもすごい。
和牛の濃厚なこの赤身にして驚きの柔らかさ。
これまでの魚から出汁を取った極上のカレーで〆。
これだけの料理、すべてに感動だ。
カウンター越しに大将が言う。
「こんな状況になってやっぱり思うんです、たくさんの人に料理をお出ししたい」と。
研鑽を積む料理人にとって表現する場を失われている現状。
これは相当にキツいことなんだ。
先の言葉が頭に残って、帰路に着く。
生き甲斐までも奪い取るこの状況を打開するために今日の自分たちの行動がある。
素晴らしい料理と考え方に。
気鋭。
まだまだ鋭く切れ込んで行こう。