欲しいものが手に入らないなら
手元にあるもので遊ぶしかなかった。
新品なんてなかなか持ったことがなかった。
そんな子供だった俺は
貧乏球団のカープが好きで、それと同じくらい
潤沢な資金を持つ人気球団のジャイアンツが嫌いだった。
ねたみ、強がり、羨ましいが交錯しながら巨人戦を観てた。
そんなカープとジャイアンツがこの時期にこのステージで
戦うことにしびれないわけがない。
揚げ物などして、しっかりツマミを用意して試合に集中。
ジリジリとジャイアンツのしたたかさや冷静さに追い込まれてゆく。
やっぱり一流はすげぇなと思わせる。
そうやってしびれながら、ビビリながら、虚勢を張りながら
俺もここまで来た。
今でもものを捨てられないし、
まずあるもので何とかしようと考えるクセは抜けない。
年齢を重ねるほどに少年期の色が濃くなってゆく。
トラウマに抗えぬ自分がいる。
夜明けに手を伸ばす。
五時起き、
ベランダで闇から生まれる光をずっと見ていた。