書画家 高野こうじ 公式blog

書道、アートの作品を中心に日々感じたことを綴る

智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。

事実は小説よりも奇なり
というが、俺はそんな小説家の事実が
とても気になるタイプ。
小説家だけじゃないけど、創造物よりも
その創造主に激しい興味をもっていかれる。

ポテンシャルやパワーは人格、生い立ちから創られる。

夏目漱石は複雑な家庭環境に育ち、勉強という結果主義に生きる。
やがて教師になるがその気難しさから教師からも生徒からも疎まれる。
後に有名になる「坊ちゃん」の中でも当時の赴任先だった
松山時代の嫉みみたいな感情が吐露されいてる。
若いころから胃病と神経衰弱に悩まされ、
英国留学時代は激しいコンプレックスで引きこもりになる。
作家としてデビューするのは新聞社に入った37歳。
文献や写真など見ても笑った顔を見たことがない。
それが晩年大量吐血し、なんとか生き返ったころから
周囲の思いに感謝をし始める。
そして49歳、「明暗」の執筆中に胃潰瘍でこの世を去る。

ちょっと細かい数字なんかは違うかも知れないけど
俺なりに思い出せる範囲の漱石の人生。

創作書家としても興味を持ったのは
精神的に苦悩し続けたイギリス留学時代に漱石
「自己本位」という考え方を身につけた。
しかし晩年の三途の川から帰ってきたときから
「則天去私」という言葉を残している。

「運命に任せ、あるように生きる」と言った感じだろうか。

「自己本位」と「則天去私」。
一見、相反した考え方のようだけど「自己本位」とは
「自分のままに生きる」と捉えられる。

自分のままに生きるとはやはりあるものを受け入れる
ということに通じるのではないかと思う。

自分勝手に生きるのではなく
自分の考えを大切にして、天命流れにゆだねる。

漱石の偉大なる功績とその人生のなかから学びました。


最後に漱石の言葉より。
「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、
 どこか悲しい音がする」


以上。