二年前の今日、父は前立腺癌の闘病の末、旅立った。
二周忌を迎えた朝、雨音が窓を打つ。
生前あまり多くを話さなかったし、
普通の親子ほど緊密な関係でもなかったように思う、
それでもか、それだからなのか、
今も父に問いかけることが多い。
毎朝、天に手も合わせる。
あの頃の日記に今だから気が付いた不思議なことが書いてある。
亡くなる2日前、午前5時に入院先の父の携帯から着信が入る。
三ヶ月の入院の間、毎日誰かが付き添っていたこともあってか
電話がかかってきたこともほとんどなかったし
もうこの頃の状態では喋ることもままならず、
ベッドから動きもせず、
箸も握れず食事もほとんど手をつけられなかった。
あわてて電話に出たらガサゴソというノイズ、
何かの拍子にボタンにでも触れたのだろうか。
そしたらすぐにショートメールが。
そこにはたった一言
「そっちに向かう」
とだけ。
そのまま財布と車のキーだけを持って病院に急いだ。
そこにはいつものように電動ベッドを傾け、うなだれている父がいた。
目も半開きで俺の話しかけることにもわかっているのか、
かろうじて頷くだけで一言も喋ろうともしない。
電話のこともメールのことも確認することができなかった。
翌日に容態が変化して夜に急いで病院に。
そしてその次の早朝、息をひきとった。
あの時、どこへ向かおうとしていたのだろう、
携帯をさわることも、ましてやボタンをいじって文字を
打つことさえも出来る状態ではなかったのに。
何か言いたかったのかな、
伝えたいことがあったのだろうか、
何かを感じていたのかな。
残念ながら考えても
もうわからない。
あれから二年、
ただ今日も手を合わせる。